私が出会ったとき、彼女は60代後半。
年齢の割りに落ち着かない印象
親しくなるうちに、夢見る乙女だなと感じた。
最盛期の自分の美貌に縋り付いて生きているように見えた。
普段は夢見る乙女
時折全く違う顔を見せる
普段から薬に囚われていた
睡眠薬を常用していたが、彼女のプライドが傷付くことや
自分の意見を否定されると自殺未遂をおこす
睡眠薬をまとめて飲み救急車で運ばれる
身寄りのない彼女の入院費をその度払った
自殺未遂は保険が効かない
胃の洗浄して様子確認の一泊で三万から五万
慣れない頃は心から心配した
一晩中付き添い枕元で泣いた
でも彼女は変わらない
そして少しずつ別な顔が現れ始めた
なにも無い壁に向かって何時間でも話している
畳にいる目に見えない何かを一心不乱に潰し続ける
むしがむしがくる
落ち着いた状態の彼女に聞いたところ
40代の頃三年間ほど覚せい剤に漬かっていた
一日中ホテルで覚せい剤を打ち続けてセックスした
そのあと警察に逮捕され実刑
血を吐く思いで覚せい剤から抜け出した
それから20年あまり
抜け出したはずのものにまだ支配されていた
汗をかくと独特な匂いがした
薬品となにかが混じった匂い
そして現れるむし
当時どんな気持ちで覚せい剤をしていたのだろうか
すぐやめられる
これくらい
だが彼女の身体にはいつまでもそれはいた
それきりやっていないと言った
自殺未遂の病院でもそれは無いと先生も言った
だとしたら20年
それでも身体に残る痕跡
それからまた月日は流れいまは彼女との交流はない
あの街を離れた時にもうこんなはなし聞くこともないと思った
でも違う
ごく普通に生活している平和な毎日の
すぐ近くにヤツはいる
弱い人間を狙ってヤツは息を潜める
近づかない勇気
断る勇気
そして抜け出す勇気
いまは楽しくても
何十年も身体を乗っ取られてることを想像して
強い決断をして欲しい
闇の中にいると孤独感が強い
そこにヤツは付け入る
どうかこのはなしを忘れないで
あなたの未来のために…

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